柔らかくて、先の丸い鍼を刺すためには、指を使って上から下に向けて加える圧力が、正確に尖端に伝わらなければなりません。鍼にかけた圧力の方向性を示すベクトルと、鍼尖が一直線上にあるとき、人体に与える損傷度を最小限にすることができるのです。圧力のベクトルと鍼尖のズレは、鍼の動揺を意味します。すなわち、傷害を受ける細胞の数を増すことになるのです。柔らかい鍼を曲げずに刺す訓練は、加えられた圧力のベクトルを知る上で、最適な方法であると言えます。逆の見方をすれば、固い鍼というのは、多少圧力の方向性がズレてしまって、鍼が動揺しても、曲がることなく、体に刺さってしまいます。これが、いわゆる、痛い鍼、ということになります。かけた力が分散してしまい、安定しない鍼です。固い鍼に慣れた人が陥り易い状態です。正確に尖端に向けて、ただ一点のみに集中して圧をかける。これができて初めて鍼を刺すことができるのです。これを、刺入力、と言います。
基礎集中講座より。