5月の最後の日曜日、関東鍼灸専門学校で、同窓会主催の講演会がありました。講師の先生は、帝塚山学院大学の杉本教授です。前年の伝統鍼灸学会での講演を、記憶されている方も多いのではないでしょうか。
先生は、中国の鍼灸事情に詳しく、今回も非常に示唆に富む、日本の鍼灸師の向かう方向性を、考える上でも、是非とも、押さえておかなければならない内容でした。
中西合一の、掛け声のもと、伝統医学の西洋医学化が、加速していった中国と、
元々、別な医学体系を持つものとして、韓医と西医を並立させた韓国、
中国では、中医医院であっても、その収入の八割が、西医によるものになってしまい、その存在価値まで、言及されるまでになってしまった中医。
かたや、金銭的にも恵まれ、韓国の若者の成りたい職業No.1になった、韓医。
その違いは、どこにあるのでしょう。
自分達の存在している足場を、固めた国と、
迷信という言葉で、捨ててしまった国、
の違いと言えないでしょうか。
足場の弱い存在は、西洋医学の世界観の中では、侵食され、価値を失うのは、自明の理でしょう。
さて、翻って、日本は、どうでしょう。
今、日本の鍼灸界が、進もうとしているのは、どちらの方向なのでしょうか。
あれ程の人材を集め、教育をしている中国でも、方向性を誤ると、その存在すら危ういことになる。
よく、鍼灸は、残るが、鍼灸師は、残らない、と言う人がいるが、
私に言わせれば、甘い、と言うほかないです。
鍼灸そのものが、存在しなくなる可能性の方が、高いでしょう。
西洋医学の体系の中に入るなら。
いつになったら、自らの足元に、気が付くのでしょう。
さて、そのような状況の中国も、本家の意地で、伝統医学を後世に残そうと、伝統的な教育を復活する努力を、始めているそうです。
一言で言うと、肩越しの臨床教育。
師の、肩越しから、実際の臨床を見て学ぶ。
統一された現代的なテキストからでは、本物の中医の臨床力は、身に付かないというのです。
これって、
積聚会の治療教育システムと同じだなあ。
そんな、おちです。