2009年度積聚治療北海道セミナーを開催します①

今年も7月19日(日)・20日(月・海の日)の2日間、
札幌ホテルノースシティーで
「2009年度積聚治療北海道セミナー」を開催いたします。
早5回目を向かえるこのセミナー。
今年も多くの鍼灸学生や鍼灸師の皆さんに
奮ってご参加頂きたいと思います。

特に東洋的な「気」の鍼灸に興味のある方、
局所治療だけでは、なかなか成績が上がらないとお悩みの方、
内臓疾患やメンタル面での治療に幅を付けたい方など
ぜひ楽しみにして頂きたいと思います。

さてこのセミナーでは、積聚治療の基本をしっかりと学びます。
セミナー内容は、
○ 銀鍼で精気を補うテクニック
○ 精気の虚と気の偏りの評価
○ 基本治療
:接触鍼、脈診と脈の調整、腹診と背部兪穴治療、四肢のツボ治療、募穴治療
  の手順などです。
初めて積聚治療に触れる方に分かりやすい内容になっています。
ぜひこの機会に積聚治療に触れてみて下さい。 

さて、ここからは積聚治療の実際を理解して頂くために、
最近私が経験した症例をご紹介したいと思います。
積聚治療の応用範囲はとても広いのですが、
まずは鍼灸院で扱う運動器疾患の代表である
「ぎっくり腰」の症例をご紹介したいと思います。
そして次に、最近多い「うつ症状」の症例をご紹介したいと思います。

 

症例1:ぎっくり腰 40歳・女性

先日私の治療室に、来院された患者さんです。
家族に両脇を抱えられ、
前かがみでゆっくりと治療室に入ってこられました。
一見して、かなり痛々しい状態でした。

お話を伺うと、一昨日の昼に自宅で鉢に水をやろうとして
前かがみになった瞬間、「ピシッ」と腰に痛みを感じたそうです。
痛みはしだいに増していき、翌日には痛みで動けない状態になりました。
一晩寝て様子をみたそうですが、痛みが取れないため来院されました。

典型的なぎっくり腰であり、過去に外傷や手術歴もなく、
大きな病気もしたことがないことから、
比較的順調に経過すると考えました。

ぎっくり腰は急に発症したようにみえますが、
実は長期間にわたり精神的・肉体的に無理を続けた場合が多く、
そのために体の芯に冷え(精気の虚)が起こっています。
下丹田の力も抜けてしまい、脊柱に負担がかっているのです。
そしてあるとき、何気ない動作で腰部の筋を傷め発症します。

積聚治療ではこの精気の虚を補い、
体の芯に温もりを甦らせることを目的にしています。
その結果、自己調整(治癒)力が高まり
自然に症状も治まってくるのです。

さて治療ですが、
普段は治療ベッドを使って積聚治療を行ないますが、
この患者さんの場合は、
椅子に座った状態で積聚治療を行ないました。

腰痛の患者さんで前傾姿勢を取る場合、
大腰筋が攣縮していることが考えられますので、
無理にうつ伏せを取らせると大腰筋が伸展され、
より痛みが悪化し、起き上がれなくなる可能性があります。
ですから私の場合は、前かがみで痛みを訴える方には
座位で治療を行なっています。

この患者さんの場合、腎積腎虚証で治療を行ない、
第2方式で背部兪穴を4穴補いました。
「基本治療」を終えた後、腰部に補助治療を加え、
初回の治療は終了しました。治療時間は20分弱です。

足腰に力が入るようになり、
患者さんは自力で立ち上がると、
ご自身で歩いて帰られました。
しかし、まだ痛みは残る状態でした。

翌日に2回目の治療を行いました。
治療室にはお一人で歩いて来られました。
昨夜はずい分よく眠れて、体がとても楽になったそうです。
腰の痛みも大分軽いそうで、笑顔がみられました。

2回目の治療では、十分横になれる状態でしたので
治療ベッドを使用しました。
初回と同様に基本治療を行ない、
腰部に補助治療をして終了しました。

治療時間は前回と同様20分程度です。
治療ベッドからの乗り降りも軽やかになり、
痛みは7~8割良くなっている状態でした。

その翌日、3回目に来院されたときは、
もう腰の痛みは大分良い状態でしたので
基本治療のみ行い治療を終えました。
治療後は、痛みもほとんどなく問題なさそうでしたので、
この回で治療は終了にしました。
その後、特に問題は出ていません。

私の場合、ぎっくり腰の治療は
だいたいこのようなパターンで治療しています。
あまり深追いはしません。
治療後の睡眠をうまく利用し、回復させていきます。

積聚治療を行なうと、体が芯から温まり、
よく眠れるようになります。
自己治癒力が高まり、
自然に炎症や攣縮などが治まってくるのです。
睡眠も治療過程の一つとして捉え、
うまく利用しながら治療していきます。

ぎっくり腰の場合、
治療回数は1~3回が多いようです。
治療時間は20分程度ですが、
そのほとんどは「基本治療」にあてられます。
「基本治療」は積聚治療の最も重要な治療過程であり、
基本治療が効いていないと、
その後に行う「補助治療」も効きが弱くなります。
「基本治療」が積聚治療の最もカナメになるのです。
セミナーではこの基本治療の手順を学びます。

続く。【次回は、うつ症状の症例をご紹介します】