現在でも日本の各界に、影響を与え続けている、中村天風という偉人がいます。
天風先生については、沢山の書物が出版されていますので、ここで詳細は述べませんが、
その中の有名な逸話を一つ。
不治の病に侵されていた天風先生が死を覚悟しながら、ヨガの行者に従いへインドの奥地に修行に行っていたときのこと、
いつまで経っても、何の教えも授けてもらえず、たまらず、教えを請うたところ、それを受けて、
ここに、二つのお碗がある。一方には、冷たい水が満たされている。もう一方は、温かい湯で満たされている。
この冷たい水に満たされている方が、お前だ。冷たい水を空けないうちに、どうして温かい湯で、椀を満たすことができよう。
ある有名な治療家の先生のところへ入門を許された人の話し。
素晴らしい理論と技術を夢見て、先生の下で修行が始まり、はじめは期待もあり、言われるままに何の疑問もなく、作業を続けていたのだけれど、
数ヶ月を過ぎて、ふと、不安がよぎってくる。
この数ヶ月間自分は、先生の身の回りの世話しかしていない。洗濯やら食事やら、
いったい自分は何をしているのだろう。
あなたが、一生懸命勉強されて、解剖も生理も東洋医学も沢山の知識があることは、はじめからわかっていること。
今していることは、それらを活かす方法を容れるスペースを作る作業。
講習会では、洗濯はさせませんが、
もとをとるには、できるだけ空っぽにして、沢山積み込んで、持ち帰るに限ります。
後で、何が入っていたか、ゆっくり吟味すればいいだけの話しです。