基礎集中・臨床研修講座

脈を診る時に、大切なことは何ですか?
今日は、こんな質問から始まります。脈が、精気の虚の状態を表しているものであるという説明は、すでにこれまでしてきた通りです。接触鍼を表層とすれば、脈は、その次の層ということになるでしょう。いずれにしても、接触鍼も脈調整も精気の虚に対してのものであることは同じです。そこで脈ですが、まず常に安定した状態で診ることが大切になってきます。積聚治療では、指を揃えて脈を診ます。それぞれ独立して指を動かして診るようなことはしません。この脈の見方は、精気の虚を診ることに特化したものです。結果的に精気の虚以外の情報が入りにくい指使いになっています。その上で、毎回、誰に対しても、同じことをするので、かえって違いが際立ってくることになります。その違いが、精気の虚の程度の違いになっているのです。例えば、私は太極拳のお教室をしていますが、私が20年前に教わった通り、発する言葉も、動きも、一切変えていません。すると、一度たりとも、同じ太極拳が、できないことがよくわかります。お稽古に来ている方も、その日その日の動きで
、体調の変化がよくわかると言います。変えないこと、変わらないことに意味があるのです。
すなわち、私たちが見ようとしている、そのものは、過去から、そして未来と永遠に変わらないものに他ならないのですから、変える必要がないといっていいのです。長い間同じことをくりかえしているうちに、変わらないものから発した、見かけ上の変化が現れるのを知ることになります。また、私たちの、やりようによっては、この見かけ上の変化が、さらに変化していくこともわかります。すべての鍵は、変わらないものに焦点を当てているか、どうかにかかっています。一見、違うものを見ているようですが、同じものを見ていることに気がつくと、大分先に進んできたと言えます。

今日の基礎集中講座より