所謂ギックリ腰

本日昼過ぎにギックリ腰の患者さんが来ました。鍼灸をやりはじめてけっこうな年数になると思うが、意外とギックリ腰の患者さんを診た機会が少ない。年に1、2回あるかないかでしょうか。

40代男性。昼に荷物を持とうとしたら腰に痛みが…。と教科書的な感じに思わず「おーっ」と心の中で。前屈より背屈で仙骨全体に痛み。やや左が強い。

脈拍52。仰臥位で腰を浮かせると同部位に痛み。腹部右側が異常に緊張している。左足底に圧痛あり。丁寧にゆっくり接触鍼を3回すると、腹部の緊張が取れていく。腰を浮かせてもらうと先ほどより楽とのこと。

脈調整、胆+2、肺と脾-1、左孔最に緊張。右の太淵を用いる。

腹診で中脘付近に押されると気持ち悪い感じがすると。脾積脾虚証としてうつ伏せ。

腰の感じは変わらず。伏臥位で腰を浮かせると、やはり同じように痛みあり。左殿筋線全体と右殿筋線に一箇所緊張あり。左肩甲骨外縁に緊張。首の緊張なし。

治療方式は第2と悩んだが、第3方式を選択。左志室に圧痛が顕著なので、右側を健側として用いた。2行線1穴ごとに臀部と志室の反応を確認。たまに腰を浮かせてもらい痛みの確認をする。4穴用いた時には仙骨の痛い部位が縮小、下方に限局される。「左の腰が緩んでいるのがわかる」と患者さん。

続けて督脈を使用。左殿筋線の緊張は1箇所になり右と同部位。4穴終了時には患者さん大分よいと。でも臀部の触った感じが気になり再び督脈1穴だけ使用。納得の反応を得たので、仰臥位になってもらう。

中脘の気持ち悪さはなし。こちらから確認する前に患者さんに言われる(笑)。でも少し手に反応を感じる。治療しながら話しを聞いていたところ、ここ何日が朝晩の温度差が大きく、昨日は寝冷えしたとのことだったので、右足三里を用いる。この時点で腰を浮かせても痛みなし。

座位になってもらう。前屈で痛みがないが、そのまま身体を元に戻すと仙骨に痛みを感じる。左肩井を使用。途中同じ動作をしてもらうと痛み軽減。もうしばらく肩井を使用。再度同じ動作をしてもらうと、痛みなし。身体を冷やさないように指導して終了。

と、こんな感じでした。

中医学的には風寒の邪により胃腸を冷やし、反応が督脈と太陽経筋へ。虚風散寒と温補胃腸を目的として私なら治療するでしょう。選穴的にはやはり背部兪穴と首周り、足陽明経は必須でしょう。

経絡治療的に考えたら先の理論に脈診の脾と肺の虚の情報が加わるので、肺・風寒邪の影響と母である脾の状態を考えての選穴になるでしょう。

長野式だったらまずは偏頭の反応確認しながら、胃の気の有無を確認するのが第一でしょうか。腹部の反応を重視すると個性的な選穴にもなりますが、使用する穴は他の治療とかぶってきます。

鍼灸がいろんな治療で効果があるのは、術者の理論と技術はさておき、結果的に精気の虚を補っているからだよね。このブログを見ている鍼灸学校の学生のあなた!積聚治療だけじゃなくいろんなことを勉強しなさいよ。一つのことに熱心なのはすばらしいことだと思いますが、時としてそれは問題になります。謙虚に幅広い知識を身につけ、熱心に深い知識を身につけましょう。患者にとって治療法なんて何でもいいんだから。

写真は夏に行った韓国のチャングムテーマパークのもの。この写真をみてドラマのシーンがわかりますか?お母さんの甘酢なり。

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