2023年度 基礎1コース 日曜日クラス 第10回(最終回)

2024年1月14日に基礎1コース日曜日クラスの第10 回(最終回)の講習会が行われました。

今回は背部治療後に仰向けになり再度腹診をしても積が取れていなかった時の2つの治療方法の紹介でした。

講習会の中で何度も話しがありましたが、積聚治療は人体を重層構造的に見ており、治療も腹部接触鍼、脈調整、背部治療と浅いところから深いところへ行っていくが、最後の膀胱経2行線の治療を終えた後でも腹部の積が変わらないということは、より深い積が残っているということ、つまりは生命力がまだ回復していない状態であること。そして、今回紹介する治療方法はさらに生命力を回復し、この積を動かす方法であると解説されました。また、背部治療までを基本治療として、この二つの治療法は補助治療となること、補助治療は様々な方法があるが、これらはその1つであると説明されました。

1つ目の方法は四肢のツボを用いた補助治療です。この治療方法は、背部治療後に再度腹診を行い、治療対象となった積がどう変化したかを確認し、変化が乏しかった積や、新たに顕著になった積を選び、この積と同じ経絡のツボを用いること。ツボは陰経を用い手足の末端の方から体幹の方に向かって選経し、圧痛や硬結のあるツボを確認すること。そして、選んだツボの左右差を確認し、圧痛が強い方を患側としてこれを指標とし、それと対称となるツボに鍼をしていくこと、この際に積の変化も確認し、積の変化がみられない時は、そのツボよりもさらに体幹に近いツボを選び同じように治療していくと説明されました。この患側を指標とし健側に鍼をする方法は巨刺の考え方が用いられているということについても解説がなされました。

また、生命力の低下がより強い状態の時は、陽経のツボを選ぶとも説明がありました。

さらにもう1つ、この四肢のツボを用いたにも関わらず、積が変化しなかった場合の補助治療が紹介されました。これはテキストには「募穴を使った積の調整」とありますが、用いるのは季肋部下縁のツボだけであるのに、なぜこれだけを募穴としたのか、また、なぜこのツボを用いるようにしたかについて、小林先生の考え方が紹介されました。

具体的な方法としては、心と脾と腎に積がある場合は左右両方の季肋部の反応点を捜し圧痛が強い方を患側としこれを指標として、その反対側に鍼をすること。肝と肺に積がある場合には、その反対側の季肋部の力がないところに鍼をすること、そしてどちらの場合でもより身体の上位の反応点を選ぶことと説明がされました。

また、治療は最小限のツボで最大の効果を出すことを基本と、背部治療の4穴、補助治療となる四肢のツボ2穴、季肋部縁のツボ2穴を限度とすること、そして、できる限り四肢のツボの治療で治療を終了させることが望ましいと説明がありました。

今回の講習会でも、この治療法の背景にある小林詔司先生の考え方が紹介されましたが、講習会の初回から高橋先生によって解説されてきた小林詔司先生が学ばれてきたことや実践されてきたこと、そして積聚治療の歴史や治療方法などの一つ一つが結ばれて、改めて積聚治療の理論体系の奥深さを感じました。初めて講習を受けられる方には難しいかもしれませんが、続けていくとそれを感じる時がくるのでないかと思います。

その後、実際にデモによって、今回の治療手順、その際の積の確認方法、選経の方法、鍼の刺し方などが説明されました。

デモの後は講習生がペアになって実際に基本治療を行い、その後今回紹介された2つの補助治療の練習を行いました。練習では今回の補助治療のことだけでなく、背部治療での取穴方法など、基本治療の質問をされる方も多くみられました。

実技練習の後は講習生からの疑問点などの質問の時間が設けられました。この際には、今回の補助治療の内容だけでなく、実際の臨床における患者への対応など、より具体的な内容の質問も出て、この8ヶ月の期間に積聚治療について学ばれてきたみなさんの成果を感じることができました。

2023年5月に始まった積聚治療基礎1コースは今回で最終回です。

最後に高橋先生から、積聚治療をぜひ学び続けてほしいが、特に学生さんたちは他の流派の治療法の勉強会にも参加して、色々と学んでほしいこと。そして、一つの治療法を選んだら、最低でも5年間は続けないと良いかどうかは判断できないので、それがどの治療法でも良いので続けてほしいとお話がありました。

講習生のみなさん、8ヶ月お疲れ様でした。

初めて参加される方には聞きなれない言葉や手技が多く戸惑いもあったかと思います。私自身も積聚治療は継続して繰り返し学んでいかないと、なかなか理解できないと実感しています。また、臨床でも繰り返し治療していくことで、その効果を実感できるようになると感じています。今後もぜひ基礎2、応用1、応用2と受講してみてください。そして、積聚治療の理論を理解するためにも、易経入門講座も受講してください。先ずは、皆様と学術大会でお会いできればと思います。