基礎Ⅱ日曜クラス 第2回報告 その2

  • まずは、生徒さんから質問がありました。

「積聚治療を患者さんに説明する時、特徴的なことや、強みや弱み、得意・不得意分野を説明したいがどうしたらよいか」という質問がありました。

「鍼灸というと、いまだに肩こり・腰痛・膝痛という様に局所のイメージを持っている人が多いので、全身の様々な症状に対応できる方法だということを伝えてもよいかもしれません。強みと弱みは、積聚治療のっていうことではなく、その人の技量になってくるが、得意・不得意というのはないんじゃないかなと。2逆に、こういう症状治療できますかっていわれると、できますって全部答えてもいいかもしれないです」と髙橋先生は答えていました。

この「できますって全部答えてもいいかもしれない」という言葉の中に、積聚治療の世界観がよく表れていたのではないでしょうか。

また、「他の治療とか技法(例えば、薬、マッサージ)とかとの相性の良さ・悪さっていうのはありますか」という質問に対しては、「特にありません。ただ、施術者がどこまで治療しようかという内容によっては、ほかの治療法が混ざってしまうかもしれない。そうした時に、鍼灸の治療法で良くなっているのか、又はほかの治療法で良くなっているのか、それとも、それが総合して良くなっているのかが判断がつきにくいことがよくある。鍼灸の治療でさらにどこまで攻めてみようか、ということを考える時、ほかの治療法が混ざっていると見極めがしづらくなる。」と高橋先生は話されていました。三療師の方にとっては、とても参考になる話だったと思います。

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  • そして、前回の復習。。。

積聚治療の東洋医学的な考え方の基盤は、「易」という考え方にありましたね。

2000年前に生まれた黄帝内経素問霊枢ではなくて、それより1000年、2000年前の易の「気とは何かという考え」を、今の医学ベースにまで落とし、応用していました。

この辺は、毎年、次の講習会で学ぶたびに説明があるので、それを繰り返し繰り返し、聞いているとわかる様になってくると説明されていたので、みなさん安心してくださいね。

また、易を学問体系として学び腑に落ちるところまでやろうとすると、6年位やって、やっとスタートラインですのでとても大変です。なので、鍼灸師としては、まずは実技的・臨床的なことから学び、それから興味があれば、易を本格的に学んでいくのがいいのではないかと話されていました。

積聚治療では、あらゆる病の原因は「精気が虚する」からと捉えています。これに対する治療は「精気の虚を補う」のみです。この「精気の虚」を補う手段として、お腹の「積聚」というものに注目して始まった治療が積聚治療でしたね。

この積聚治療は「基本治療」と「補助治療」といわれる2つの治療スタイルからなっており、この「基本治療」というのは、「基本」という名前が示す通り、どんな患者さんにも絶対に行うという内容でしたね。どんな患者さんも、病の原因は一つ(精気の虚)なので、治療目的は一緒です。「原因が一つ」で「治療方法の目的が一つ」で、「治療方法が一つ」、これだけシンプルなことはないですね。基本治療だけやって治ってしまうというのが、術者側としては完璧で楽なわけですが、実際の臨床では、自分の技量で患者さんの精気の虚が補いきれない時がある。その時に必ず「補助治療」をして行かなければならない。治らなかった時には、こちらの技量が少ないことは間違いないのだけれども、いかに、この補助治療を知っていて、使い分けができるかっていう所が、治療の良し悪しがにかかってくると、髙橋先生は話されていました。

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今現在、補助治療は、「外傷治療」「基本的な補助治療」「一般的な補助治療」に整理されていましたね。

基本治療で精気の虚を補えないときには、基本治療をやっても補えない原因が必ずあります。どっかに外傷があるのが原因で、精気を補うのを邪魔している場合には、「外傷治療」でした。詔司先生がよくやられている補助治療でしたね。

また、「易の考え方」をベースに「陰陽」ということを人間の身体に当てはめて導き出した補助治療が「基本的な補助治療」でしたね。詔司先生が提案しているのは、指間穴、井穴、背中の一行線・脊際・督脈、お腹の任脈でした。たとえば、井穴は身体の末端で、いわゆる陰陽の切り替わりの部分ですね。指間穴は内側と外側の境目という意味での陰陽ですね。

これらの内容は少し難しいので、応用Ⅰでやっていく内容でした。

そして、基本的な補助治療のように難しいことを考えなくても出来る様に、小林先生がいろいろ発見してきたのが、「一般的な補助治療」でした。小林先生の経験や日本の鍼灸治療の経験に基づいたツボ達でしたね。まずここを十分に理解して使いこなせる様になってくるのが基礎Ⅱの一番の目標でした。これが十分に使いこなせる様になってくると、これを使わなくても治療が出来る様に技量が上がってくると話されていましたね。ここを徹底的にやっていくと、ツボの診方、ツボの使い方を含めて、東洋的な身体の診方が勉強出来るということと、あと様々な、鍼法・灸法を使うので、様々な鍼法・灸法を使いこなせる様になる。このことは、積聚治療で今後使っていく豪鍼自身の技量を上げたり、あと、どうしても使わなくてはならない、三稜鍼、そしてテイ鍼という積聚治療の三つの鍼をうまくなるためのステップにもなる髙橋先生は話されていましたね。

一般的な補助治療は、とても効果の出しやすいツボ達ですので、機会を見つけてどんどん使っていきましょう。

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  • つぎに、「陰陽による人の身体の診方」の講義でした。

積聚治療の身体の診方は、陰陽に応じて人の身体をみていくのでしたね。

この陰陽による人の身体の診方には、「上下」「深浅」「内外」「陰陽」の四つがありました。それぞれ、「下・深・内・陰」は陰、「上・浅・外・陽」は陽でしたね。これらは積聚治療で臨床を行っていく上で一番基本になることなので、常に頭の中に入れておいてほしいですね。また、物事を陰陽でみて行く習慣をつけることで、徐々にこれらの考え方のトレーニングをしてほしいと話されていました。

これらを考える時の注意として、それぞれが「相対的」な概念ということを常に意識することが大切でした。例えば「上」は「下」がないと「上」ではないということです。そして、「どこを基準」にした時の陰陽なのかということを常に意識することが大切でした。この基準によっては、「上」だったものが、「下」になることもあり、「陽」だったものが、「陰」にもなることもあり、固定的なものではないと話されていました。小林先生や積聚治療のベテランの先生方は、見た目では、何も考えないでただ手順をやっているように見えますが、実は、こういう色々なことを考えながら、この症状は陰だな、陽だなと考えていると髙橋先生は話されていました。

そして、基礎Ⅱの内容を理解する上で一番重要な治療概念は「上下」でしたね。

病証の成り立ちはまず、下虚(陰虚)が手足の末端から始まります。その冷えがのぼせをもたらし、徐々にその冷えが上にのぼることで、さらに症状が悪化すると積聚治療では考えます。そして、足から来た冷えが一番最初に反応として表れやすいところが膝回りでしたので、何かしらの症状がある人には、どんな人にでも、膝回りには指標が出やすいんでしたね。

  • その次に「陰の病症の運動器疾患」の講義でした。

講義では、人間を上下で見た時の、下の方の陰の部位についてみていきました。例えば、膝痛や生理痛の症状は陰の病症。更年期障害みたいなことまでなってくると、陰の病症だけでないものもでているんだなと考える、陰陽のトレーニングをしましたね。

その中で、鍼灸臨床で遭遇しやすい陰の病症の運動器疾患をとりあげました。具体的には、腰臀部の深い冷えや痛み・神経痛・麻痺、下肢の深い冷えや痛み・神経痛・麻痺、股関節痛、膝の痛み・腫れ・変形・熱・運動障害、足関節捻挫です。

これらを見ていくときに重要なのは、次の指標達をとることでしたね。腹部では恥骨(曲骨あたり)、背腰部では椎間(広いところ)・脊際(棘突起頂上際)、臀部では腸骨稜(I1~5)、仙椎、仙腸関節、下肢では委中、委陽、大腿骨内側上顆、陰陵泉、膝関、崑崙、太渓でした。

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陰の病症の患者さんが来た場合は、無条件にこの辺りが触れられるようになりましょう。これらの指標の中で特に一番大事な指標は腸骨稜でしたね。この腸骨稜の指標の大事さがわかると、飛躍的に積聚治療の理解が進むと髙橋先生は熱弁されていました。そして、これらの指標が触れられるようになると、基本治療をして、これらの指標のどれがどう変化したかで、どの補助治療を使っていけばいいかを組み立てていくことが可能になってきます。具体的な補助治療の部位と手段の説明がありましたね。細かいツボの使い方から勉強しなおしたい人は、もう一度『10巻』を読むと良いとのアドバイスを頂きました。

  • 後半の実技では、

陰の病症を見る際に一番大事な指標である「腸骨稜」の指標の取り方と「崑崙・太渓」の指標の取り方を練習しました。今回も30分で治療を終えることを目標に、お互いの治療を行いました。

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  • 講習が終わってみて、今回も非常に内容の濃い一日だったかと思います。

では、次回は6月26日(日)です。

次回も元気にお会いしましょう。

基礎Ⅱ日曜クラス 聴講生 伊賀秀文