基礎1コース日曜日クラス 第4回

2023年6月25日に基礎1コース日曜日クラスの第4回が開かれました。

今回のテーマは腹診です。

腹部接触鍼よる最表層の気である腹部の聚を動かした後、さらに次層となる脈を調整し、いよいよ腹診をして積を診て、背中の治療へと続く段階となりました。

講義の冒頭では先ず、前回の脈診についての復習が行われました。

復習の内容としては、積聚治療の脈診と、小林先生が当初おこなっていた脈診を比較することで、積聚治療の脈診の特異性を明らかにすることです。

この二つの共通する点としては、中脈を基準に浅いところを陽位、深いところ陰位として、また、寸関尺に五臓六腑を配当したところであることと説明されました。

しかし、小林先生が当初おこなっていた脈診では、臓の状態を表す陰虚脈を中脈より深い陰位での拍動で比較したことに対して、積聚治療での陰虚脈は脈が触れなくなるまで指を沈めた後の脈拍の戻る強さを比較すること、また、陽実脈もどの六腑が実しているかを診るのではなく、積聚治療では皮膚表面に指を軽く当てた時に拍動があるかないか判断するだけであること。そして、最も重要なのは理論的な違いであり、それは、臓腑の状態を脈診で捉えるのではなく、積聚治療では脈診ではあくまでも重層構造の浅い部分だけを診ていこうとしていることと、臓腑の状態は腹診で診ていこうとしている点にあると解説されました。

積聚治療の脈診は、学校で習う脈診とは異なり、戸惑うことも多いと思います。しかし、説明された陰虚脈の触れ方、陽虚脈の触れ方、そして、積聚治療で診る脈診は臓腑の異常ではなく、重層構造の浅い部分のものを診ていること、また、4つの脈状や、それぞれの脈の程度での病の状態などを頭に入れておくと、今後の治療がわかりやすくなると思います。

さて、続いて腹診、腹証の決定です。ここでは、腹証の決定という言葉よりも、腹部の積を確認して、その積に従って、背部穴の治療方針を決めるというふうに理解するとわかりやすいと説明されました。

そして、腹部は全身の気の状態が投影されたものであることから、お腹に積聚があることは、生命力が低下しているという全身の状態を表していること。この積と聚については、どちらにも痛み・硬さ・動気があること。そして、重層構造という考え方から、腹部接触鍼や脈調整による浅い層の気の施術によって消失するものを聚とし、腹診によって診ていくものが積であることと説明がありました。

また、この聚の消失の程度は患者の状態と接触鍼や脈調整も含めた術者の技量によって変わること。そして、このことを『積聚治療 気を動かし冷えを取る』(医道の日本社)に記載された「積聚の相対関係図」(p196)を用いて解説されました。高橋先生は、この図は頭に入れておくと良いと話されていました。

今回も気の重層構造という言葉が出てきました。積聚治療においてはとても大切な言葉です。この言葉の意味を考える上で、陽的・陰的、浅い・深い、動的・静的という対語もとても大切だと思います。頭で理解しようとしても難しいと思いますが、やはり手順を繰り返し行うことで、実感することもあると思います。

講義では、さらに積の種類について説明がされました。

『難経』の16難と55難、56難が、積聚治療の積聚に関わってくる内容になるが、小林先生はこの三つの難を合わせて、積聚という腹部の異常が腹部の左右上下中央にあるという形にして、それぞれを動く積、拍動の積を動積、硬い積を牢積、そして痛みのある積を痛積としたと説明がありました。

この後、それぞれの積の概要について説明がありました。

続いて、積を段階分けする基準について説明され、積の優先順位は痛積を第1とすること、痛積は自覚痛を優先すること、そして同程度の積があった場合は、下方を優先し、次に中央を優先することと解説されました。

その後、腹部の5つの領域の分け方の説明がされ、分ける際の基準となるツボや経絡について説明があり、その後、実際に高橋先生による腹部の領域分けのデモが行われました。

そして、デモの後は、講習生同士がペアとなって、お互いに腹部の領域のラインを実際に腹部に描く実技が行われました。

 

前回の脈診から腹診まで、初めて積聚治療を習う方には覚えることが多く大変かもしれませんが、基本治療は毎回同じことを行いますので、何度も練習していくことで、繰り返し同じことが行えますので、意外と覚えやすいのではないかと感じます。

実技の後は、さらに腹診の際のお腹の圧しかたについて説明がありました。

腹診では3本の指を開き気味にして広範囲を診ること、腹圧と均衡がとれる深さが適当であること、そして何よりも大切なことは、基本は上から下へ診ていくが、毎回同じ順序で腹診をすること、同じ手順とすることでルーティン化して、見落としを防ぐことになると説明されました。

この後に、実際の腹診のデモが行われて、お腹を触る、また圧する時の注意点が説明されました。

デモの後は、腹診だけでなく、前回まで習ってきた脈拍確認から指標確認、腹部接触鍼、指標の再確認、脈診、脈調整、腹証の決定までの実技を、お互いに行いました。

 

腹診では腹部接触鍼と脈調整によって、浅いところから調節し、より深いところの異常を調節すべき最終目標として、この積を目標にしたのが積聚治療です。この積を取るために必要なツボが背中のツボという形になります。

次回はいよいよ背部接触と背部治療になり、積聚治療の基本治療のほぼ全行程が終わります。

今回も覚えることがたくさんあったかと思います。先ほども述べましたが、まずは繰り返し実践することが大切だと思います。頭で考えていても、なかなか手順や細かい技術は覚えることが難しいと感じます。

まずは脈拍の測定から腹診まで、マニュアルやメモ書きを見ないで、手順を踏めるように、何度も練習してみてください。